●上海列車事故の記憶
その一週間前、私は高知学芸中を卒業した。その卒業式で、校長の佐野先生は学芸創立30周年の記念として、今高校の修学旅行団が中国に行っておりますと話をしていた。佐野校長は朝礼だとか集会がある度に平家物語の「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす」という言葉から話を始め、最後は中国の悠久たる大地がどうのこうのとか、蘇州のどこそこはこうだとかで話を終える、とにかく中国好きな人だった。その日はまた話が異様に長く、かなりの人が眠りへと誘われていた。学芸は私立の中高一貫教育校であり、ついでに予備校まで作ってしまうような、いわゆる進学校の類いに入るものである。また、殊更にスポーツが強いとか東大に何十人も合格する訳でも無い、高知県外の人なら誰も知らないような平凡な、そして平和な進学校でしかなかった。
